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かぜとひかりとはたちのわたしと

風と光と二十の私と

坂口 安吾

「文芸 第四巻第一号(新春号)」1947(昭和22)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,154 字 · 30 页

青空文庫

然し、君、あんまり子供を叱っちゃ、いけないよ」

「ええ、まア、僕の子供のことは僕にまかせておいて下さい」

「そうかい。然し、お手やわらかに頼むよ、有力者の子供は特別にね」

と、その日の主任は虫の居どころのせいか、案外アッサリぴょこぴょこ歩いて行った。私は今まで忘れていたが、彼はほんの少しだがビッコで、ちょっと尻を横っちょへ突きだすようにぴょこぴょこ歩くのである。だが、その足はひどく速い。

まもなく子供はてれて笑いながらやってきて、先生と窓の外からよんで、隠れている。私はよく叱るけれども、この子供が大好きなのである。その親愛はこの子供には良く通じていた。

「どうして親父をこまらしたんだ」

「だって、癪だもの」

「本当のことを教えろよ。学校から帰る道に、なにか、やったんだろう」

子供の胸にひめられている苦悩懊悩は、大人と同様に、むしろそれよりもひたむきに、深刻なのである。その原因が幼稚であるといって、苦悩自体の深さを原因の幼稚さで片づけてはいけない。そういう自責や苦悩の深さは七ツの子供も四十の男も変りのあるものではない。

彼は泣きだした。彼は学校の隣の文房具屋で店先の鉛筆を盗んだのである。