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かぜのたより

風の便り

太宰 治

1942(昭和17)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,044 字 · 66 页

青空文庫

感傷の在りかたが、諦念に到達する過程が、心境の動きが、あきらかに公式化せられています。かならずお手本があるのです。誰しもはじめは、お手本に拠って習練を積むのですが、一個の創作家たるものが、いつまでもお手本の匂いから脱する事が出来ぬというのは、まことに腑甲斐ない話であります。はっきり言うと、君は未だに誰かの調子を真似しています。そこに目標を置いているようです。「芸術的」という、あやふやな装飾の観念を捨てたらよい。生きる事は、芸術でありません。自然も、芸術でありません。さらに極言すれば、小説も芸術でありません。小説を芸術として考えようとしたところに、小説の堕落が胚胎していたという説を耳にした事がありますが、自分もそれを支持して居ります。創作に於いて最も当然に努めなければならぬ事は、「正確を期する事」であります。その他には、何もありません。風車が悪魔に見えた時には、ためらわず悪魔の描写をなすべきであります。また風車が、やはり風車以外のものには見えなかった時は、そのまま風車の描写をするがよい。風車が、実は、風車そのものに見えているのだけれども、それを悪魔のように描写しなければ「芸術的」