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ふうりゅう

風流

坂口 安吾

「新潮 第四八巻第十三号」1951(昭和26)年12月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,419 字 · 19 页

青空文庫

このような奥儀にかかっては、森羅万象も森羅万国も軽手玉にとられ文句なしにヒネラれるのが自然かも知れぬ。物質文明何者ぞ。すべては精神であるぞ。すべて、気の持ちようだ。鯛がある気持。鯛を食べた気持。それは真に鯛を食べた卑俗さにくらべて高さ深さに測りがたい距りがあるものだ。これを至高の文化という。

実に風流の奥儀と心境ほど、自在無碍な魔法使いは多く見当らないところであろう。どんな気持にもなりうるし、気持の方が実質よりも威力ありと信じることすらもこの境地ではいささかも不自然を感じないのだ。世界一になった気持ぐらいは、お安いことであろう。

「自信のあるのも結構だが……」

焼け野原になってから、たった六年目のバラック都市よりも暗く悲しい焼けない都市の庶民住宅、また、異様の発見に、私の戸惑った脳天にはそれからそれへと悲しい思いばかりがこみあげて仕方がなかった。

「なぜ世界一の必要があるのだろうか。みんながもッとシアワセになることを、この一番身近かなことを、なぜ真剣に考えることを忘れているのだろう」

意気当るべからざる空論家と、強制に服することを処世の急所と会得している天性の諦め人とが同一の人間であるとは、それを理窟で納得し、悟りすまそうと思っても、なかなかそうはいかないものだ。