轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ふうきんとさかなのまち
風琴と魚の町
林 芙美子
「改造」1931(昭和6)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,372 字 · 27 页
石榴の葉が、ツンツン豆の葉のように光って、山の上に盆のような朱い月が出ている。肌の上を何かついと走った。
「どぎゃん、したかアい!」
思わず私は声をあげて下へ叫んでみた。
母が、鏡と洋燈を持っているのが見えた。
「ハイ! この縄を一生懸命握っとんなはい」
父はこうわめきながら、縄の先を、真中の石榴の幹へ結んでいた。
「いま、うちで、はいりますにな、辛抱して、縄へさばっといて下さいや」
おろおろした母の声も聞えた。
「まさこ! 降りてこいよッ」
父は覗いている私を見上げて呶鳴った。私は寒いので、父の、黄色い筋のはいった服を背中にひっかけると、転げるように井戸端へ降りて行った。縁側ではおじさんが「うはははははうはははははは」と、泡を食ったような声で呶鳴っていた。
「ええ子じゃけに、医者へ走って行け、おとなしう云うて来るんぞ」
石畳の上は、淡い燈のあかりでぬるぬる光っていた。温い夜風が、皆の裾を吹いて行く。井戸の中には、幾本も縄がさがって「ううん、ううん」唸り声が湧いていた。
「早よう行って来ぬか! 何しよっとか?」
私は、見当もつかない夜更けの町へ出た。波と風の音がして、町中、腥い臭いが流れていた。