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ふうきんとさかなのまち
風琴と魚の町
林 芙美子
「改造」1931(昭和6)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,372 字 · 27 页
校長は背の高い人であった。私はどこかの学校で覚えた、「七尺下って師の影を踏まず」と、云う言葉を思い出したので、遠くの方から、校長の後へついて行った。
「道草食わずと、早よウ歩かんか!」
校長は振り返って私を叱った。窓の外のポンプ井戸の水溜りで、何かカロカロ……鳴いていた。
雨戸のような歪んだ扉を開けると、ワアンと子供達の息が私にかかった。(女子六年 イ組)と、黒板の上に札が下っていた。私は五年を半分飛ばして六年にあがる事が出来た。ちょっと不安であった。
9 長い間雨が続いた。
私はだんだん学校へ行く事が厭になった。学校に馴れると、子供達は、寄ってたかって私の事を「オイチニイの新馬鹿大将の娘じゃ」と、云った。
私はチャップリンの新馬鹿大将と、父の姿とは、似つかないものだと思っていた。それ故、私は、いつか、父にその話をしようと思ったが、父は長い雨で腐り切っていた。
黄色い粟飯が続いた。私は飯を食べるごとに、厩を聯想しなければならなかった。私は学校では、弁当を食べなかった。弁当の時間は唱歌室にはいってオルガンを鳴らした。私は、父の風琴の譜で、オルガンを上手に弾いた。