轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ふうちそう
風知草
宮本 百合子
「文芸春秋」1946(昭和21)年9~11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,107 字 · 88 页
拘置所では世間並に髪を生やしておくのにさえ蓄髪願という書類を出さなければならなかった。こんな大きい髯をもっているために、この同志はどんな書類を書き、人間は自分の髯については、それをのばしても刈っても自由な権利をもっているのだということについて、がんばって来たのだろう。人権に関する最初の戦利品というようなその髯をみて、ひろ子は微笑をおさえることが出来なかった。
髯の同志がきょうの世話役らしく、暫くすると階段の下から、
「みんな、集って下さい」
また響きのいい声で呼んだ。牧子と子供とが、どうしようかしら、という風にひろ子のわきに立って躊躇しているのに目をとめた。
「あなたも来て下さい。遠慮なんかいりゃしない」
一同は二階の一室の三方へ詰って坐った。建物のはずれの室で二方に大きい窓が開いた床の間つきの六畳であった。二三人の男のひとたちが、床の間のかまちに腰かけて、三尺の入口のふみこみのところだけ、すこしすきがのこされた。
「あ、ようござんす。それはまたそれで、あとからやりますから……」
ござんす、というところがいく分鼻にかかる訛りを響かせながら、坐っているみんなに挨拶するようにして徳田球一が入って来た。