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ふうぼう

風貌

小山 清

――太宰治のこと

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,448 字 · 32 页

青空文庫

「僕は小山が淋しそうにしているのを見ると、どうしていいかわからなくなるんだよ。」私が三鷹を訪ねるときは、いつもなかば駈込み訴えの気持であった。訪ねられる方としては、かなわなかったかも知れない。花屋であざみの花束を買ってくれたこともある。その日太宰さんの許に置いてきた原稿については、読んでみてこんどは少し酷評をするかも知れないよと云われ、私も、見せない方がよかったかも知れないと云ったのである。太宰さんは、君がいい作品を書いたら、賞代りに一緒に旅行しようと云って、「僕がいいと云えば、天下無敵だよ。」と云った。私が真顔で「そう思っています。」と云ったら、そういう私の顔を見て、太宰さんは急にそわそわし、便所に立った。

その頃私は三鷹へ行くと、よく高梨一男さんと一緒になった。私は新聞配達という職業柄あまり暇がないので、たまにしか行かなかったせいか、ほかの客と顔を合わせる機会も少く、顔見知りの人も殆んどなかったが、どういう因縁か、高梨さんとはよく落ち合った。どっちかが先に来ていて、顔が合うのである。おかしい位であった。太宰さんも、おやまた会ったねという顔をした。