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ふうぼう

風貌

小山 清

――太宰治のこと

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,448 字 · 32 页

青空文庫

」と云った。私はうなずいた。

翌日はちょうど武田神社のお祭りの日にあたっていた。井伏さんと三人でお花見に行った。土地の人はみんな着流しでぞろぞろ歩いていた。頭上高くB二九が一機、白い尾を長く曳いて飛行していたが、地上の人たちにとっては、さっぱり脅威の的にならないようであった。小高い丘の上で持参の弁当をひろげた。井伏さんは堀端で遊んでいる子供の群を見下して、「子供って、みんなああして遊んでいるね。僕たちの子供のときと変らないね。ほら、ああいう風に石なんかを投げて。」と云った。太宰さんが田山花袋は年若な女を見ると、全身を掻きむしりたくなったそうだと云うと、井伏さんはにこりともせず、「大げさなことを云う人だね。」と云った。太宰さんは私をかえりみて、一寸表情をした。井伏さんにして、このユウモアが通じなかったのはおかしいという面持をしたのである。その頃私たちは、なにかと云えば、お互いに乃公は全身を掻きむしりたくなったと云っては、笑い合っていたのである。その日井伏さんは南方に従軍されたときの服装らしく、皮の長靴をはいていた。井伏さんは沢のようなところに足をふみ入れて、なにやら摘草をされていたようであった。