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ひだのかお

飛騨の顔

坂口 安吾

「別冊文藝春秋 第二三号」1951(昭和26)年9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,316 字 · 31 页

青空文庫

しかし、私は戦争中、東京の碁会所で、ヒダ出身の小笠原というオジイサンと知り合った。その顔は各々の目の上やコメカミの下や、目の下や口の横や下などにコブのような肉のもり上りがくッついていて、七ツも八ツものコブが集って顔をつくっている。その中に目と鼻と口があって、コブとコブの間の谷がいくつもあって、そのコブは各々すすけたツヤがあって、一ツの顔ができ上っているのです。

ところが大家族制で有名なヒダの白川郷の写真を見ると、そこのジイサン連の顔が似たようなコブコブと谷間が集ってできてる顔ですね。すると、こういうのがヒダの顔かなア、と私は思った。

いったいヒダというところは、昔はミノとヒダを一ツに合せてミノとよんでいたようだ。だから昔のミノはヒダを含んでいるし、ヒダはミノ全体でもあって、私が昔のヒダ王国というヒダはミノも含めた全体です。また信濃も一しょに含まれてこの一族の本貫本拠をなしていたとみてよろしい。越前の大野郡も含まれていたようだ。その古いミヤコは今のヒダの高山と古川の中間にあったと見られるが、また信濃の松本のあたりにもあったようだし、南下して今のミノの武儀郡を中心にミノのほぼ各郡と伊那にもミヤコか行宮がちらばっており、一人の王様の南下の順路にいくつも出来たり、別の代の王様の居城であったり、色々のようだ。