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ひだのかお
飛騨の顔
「別冊文藝春秋 第二三号」1951(昭和26)年9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,316 字 · 31 页
再版したいと思って探していたところだが、用がすんだら借してくれと云う。よろしい、と約束してきたが、旅行中に手帳をなくしたので、この本にメモをかきこんだから、まだ用が終らない。もう、じき終るでしょう。
この水明館の先代というのはヒダ出身ではないそうだ。それで却ってヒダについて他国へ紹介したいような気持を起したのかも知れない。ヒダで生れてヒダで育った人というものは、ほとんど自分の国について人に語るべき多くの興味を持たないようだ。
私は考えていた。ヒダの郷土史家の中に、ヒダ流の方法で郷土史を考えている人はないかと。――ヒダ流の方法というのは、ヒダ王朝は日本国史のタブーであり、それは完璧に隠されているが、ヒダに残った伝説をモトにしてヒダ流の国史を考えている人はないか、という意味である。しかし、そういう独特の史家はいなかったようだ。水明館の先代は、むろんそういう史家ではないし、元来が史家でもない。とりとめもない通俗案内書の一種にすぎないのである。
私の部屋の係りは二人のヒダ生れの女中であった。その姉さん株の一人はまさにヒダの顔であった。他国でザラに見られる顔ではない。