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きがちたいをあるく
飢餓地帯を歩く
下村 千秋
――東北農村惨状報告書――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,478 字 · 31 页
「へえ……」と、母親は答えて、どこまで行くのか、と方言で訊いた。
「浦野館まで行くつもりです」と私が答えると、浦野館に、親類でもあるのかという。無い、と答えると、それじゃ、宿屋はなし、どこへ泊るつもりかと訊き返すので、私は、「百姓家へ泊らして貰うつもりです」と答えて見た。すると、その母親は、かぼちゃのめしで、囲炉裏端へごろ寝してもいいのなら、わたしの家へ泊るがいい、と言ってくれた。私は、喜んで答えた。
「それで結構です。是非泊めていただきます」
そこで私は、そこまで私のカバンを持ちながら道案内して来てくれた三本木の青年に帰って貰うことにした。そのお礼として五十銭銀貨二つを出すと、その一つだけを取り、あとはどうしても取らない。ここにもこの地方人の純朴さが現われていた。私は、二つの銀貨を渡すために、長い間、泥道の中に彳まなければならなかった。
さて、その青年と別れると、私は、子供をおぶった母親の後について、その日の暮れ方、どろどろの足を、その家の土間へ踏み入れたのであった。この家の周囲には、雪に蔽われた田圃と畑とが、荒寥としてひろがっていた。その庭には、藁塚が四つ五つ、円い塔を作って居り、家の周囲には、雪除けの藁の垣が張りめぐらされていた。