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きがちたいをあるく
飢餓地帯を歩く
下村 千秋
――東北農村惨状報告書――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,478 字 · 31 页
二
「まアそうです」と校長は暗い顔をした。
「子供達の大部分は、とてもひどいぼろを着ています。今まででもずいぶんひどい身なりでしたが、今年の飢饉では、もう身につけるものなどは一つでも買うことが出来ない有様です。雪が降り出してから、ゴム靴ははいて来ますが、そのゴム靴が破けていて、中が泥だらけのが多いです。しかも素足にその泥だらけのをはいているのですから、堪らないです。もしこのままでいたら二月頃には、餓死者と同時に、凍死者も出るのではないかと思われるほどです……」
そうして校長先生は、しばらく沈黙の後、部屋の隅の「かます俵」を指し、
「あれは、この学校に所属した田から取れた米です。年々三斗ばかり取れるので、お正月が来ると、それでお餅をついて祝ったのですが、今年はもみで一斗ばかり、それとどうせくだけ米ですから、このお正月にはお餅もつかないことにしました」
二
岩手県下は、この岩手郡を始め、二戸郡、八戸郡の大部分、下閉伊郡、上閉伊郡、和賀郡の一部分が、飢餓地帯と化した。その総面積は約三千町歩であるという。殊に問題であることは、八戸郡、下閉伊郡の交通不便の山地であるという。