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こうでん
香奠
豊島 与志雄
「時流」1925(大正14)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,989 字 · 46 页
それを子供達の方ではいいことにして、彼を相手にいつまでも遊んでいました。丁度四つと六つの悪戯盛りで、時によると随分しつこく彼にふざけました。耳を引張ったり、鼻をつまんだり、ワンワンをさしたり、私共が見兼ねて叱りつけるようなことも度々でしたが、然し彼はどんなことをされても平気で、始終にこにこしていました。云わば彼は黙って子供達の玩具になってるのが面白いらしく、また子供達の方では、彼を生きた人形とでもいうような風に、何の気兼も憚りもない遊び相手にしていたのです。
それでも彼は、時折子供達相手の遊びに変に真剣になることがありました。いえ、子供相手の遊びというよりも、自分一人の遊びと云った方がよいかも知れません。或る時、彼が子供達と一緒に座敷で遊んでいるうちに、夕飯の仕度が出来上って女中が呼びに行きました。でも彼はやって来ません。二度呼びにゆくと、子供達だけやって来て、彼は一人残っています。何をしてるのかと聞くと、羽子をついてるのだというのです。でそのままにして、先に食事を初めましたが、いつまでも羽子の音が続いて、彼がやって来ないものですから、また女中を呼びにやりました。