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うま

馬

佐左木 俊郎

「新潮」1932(昭和7)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,299 字 · 15 页

青空文庫

*

伝平は二十三歳で結婚した。

「俺あまだ女房なんか早え。そんなことより、まず、馬を買う算段をしなくちゃ。馬のいいのを一匹飼って、それから……」

伝平はそう言っていたのであったが、母親が眼に見えて老衰して来て、飯を炊くのにも困るようなことになったものだから、両親が否応なく押しつけてしまったのであった。

「ほう! 伯楽も、馬々って、馬をほしがっていだっけ、駒馬さは手が届かなかったど見えで、牝馬にしたで。」

部落の人達はそんなことを言った。

併し、いずれにもしろ、伝平はそれで落ち着いた。そして、それから間もなく、伝平は、一匹の馬を飼うことが出来るようになった。自分の所有になったのではなかったが、高利の金を貸している高木のところで、抵当流れとして取り上げた南部産の駒を、伝平のところへ預かったのであった。伝平の生活は再び活気づいて来た。

「立派な馬だなあ。こんな立派な馬を、俺家さ飼って置げるなんて、神様のお授けのようだなあ。粗末には出来ねえぞ。部落の奴等は、なんとかかんとか言うげっとも、やはり、高木の旦那は腹が大きいなあ。偉い人だよ。」

伝平はそう言って、馬のことは、なんでも自分でするのだった。