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えきふにっき
駅夫日記
白柳 秀湖
「新小説」1907(明治40)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,989 字 · 69 页
高谷千代子の美しい姿がそこへ現われた。いつにない髪を唐人髷に結うて、銘仙の着物に、浅黄色の繻子の帯の野暮なのもこの人なればこそよく似合う。小柄な体躯をたおやかに、ちょっと欝金色の薔薇釵を気にしながら振り向いて見る。そこへ大槻が粋な鳥打帽子に、紬の飛白、唐縮緬の兵児帯を背後で結んで、細身の杖を小脇に挾んだまま小走りに出て来たが、木戸の掛金を指すと二人肩を並べて、手を取るばかりに、門の方に出て行くのである。
千代子は小さい薬瓶を手巾に包んでそれに大槻の描いた水彩画であろう半紙を巻いたものを提げている。私はハッとしたが隠れるように項垂れて、繃帯のした額に片手を当てたが、さすがにまた門の方を見返した。
私が見返した時に、二人はちょうど今門を出るところであったが、一斉に玄関の方を振り向いたので、私とパッタリ視線が会うた。私は限りなき羞かしさに、俯向いたまま薬局の壁に身を寄せた。
きのうまで相知らなかった二人がどうして、あんな近附きになったのであろう、千代子が大槻を訪ねたのか、イヤイヤそんなことはあるまい、私は信じなかったが世間の噂では大槻は非常に多情な男で、これまでにもう幾たびも処女を弄んだことがあるという、そう言えばこの間も停車場でわざわざ千代子の戸を開けてやったところなど恥かしげもなく、あつかましいのを見れ