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えきふにっき

駅夫日記

白柳 秀湖

「新小説」1907(明治40)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,989 字 · 69 页

青空文庫

長峰の下宿に帰ってから灯を消して床に入ったが虫の声が耳について眠られない、私は暗のうちに眼ざめて、つくづく足立夫婦の親切を思い、行く先の運命をさまざまに想いめぐらして、二時の時計を聴いた。

二十一

少からず私の心を痛めた、足立駅長の辞職問題は、かの営業所長の切なる忠告で、来年の七月まで思いとまるということになって私はホッと一息した。

物思う身に秋は早くも暮れて、櫟林に木枯しの寂しい冬は来た。昨日まで苦しい暑さを想いやった土方の仕事は、もはや霜柱の冷たさをいたむ時となった。山の手線の複線工事も大略済んで、案の通り長峰の掘割が後に残った。このごろは日増しに土方の数を加えて、短い冬の日脚を、夕方から篝火を焚いて忙しそうに工事を急いでいる。灯の影に閃く得物の光、暗にうごめく黒い人影、罵り騒ぐ濁声、十字鍬や、スクープや、ショーブルの乱れたところは、まるで戦争の後をまのあたり観るようである。

大崎村の方から工事を進めて来た土方の一隊は長峰の旧の隧道に平行して、さらに一個の隧道を穿とうとしている。ちょうどその隧道が半分ほど穿たれたころのことであった。