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こうげんのたいよう

高原の太陽

岡本 かの子

「むらさき」1937(昭和12)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,558 字 · 17 页

青空文庫

「こんなことを女性に向って云い出す青年は、どういうものか」すると青年は、内懐にしていた片手を襟から出し片頬に当てていかにも屈托らしく云った。かの女のあまり好かないこんな自堕落らしい様子をしても、この青年は下品にも廃頽的にも見えない。この青年の美貌と、蘂に透った寂寞感が、むしろ上品に青年の態度や雰囲気をひきしめているのかも知れない。

「やっぱり異性同志に、そういった種類の交際を望むのです。少くとも僕は」

それからしばらくして

「でないと僕は寂しいんです」

唐突でまるで独言のような沈鬱な言葉の調子だ。かの女はこの青年がいよいよ不思議に思えた。

かの女は居坐りを直し、寒くもないのに袖を膝に重ねて青年の性の知れない寂寞が身に及ばないような防ぎを心に用意した。

かの女の家は元来山の手にあるのだったが、腺病質から軽い眼病に罹り、大学病院へ通うのに一々山の手の家から通うのも億劫なので、知合いのこの根津の崖中の邸へ老女中と一緒に預けられたのであった。

かの女は女学校を出たばかりであった。両親はあまり内気な性質のかの女に、多少世間を見させようとする下心もあって、他人の屋根の下に暮らさせるためだった。