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こうだいじ

高台寺

宮本 百合子

「新潮」1927(昭和2)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,503 字 · 14 页

青空文庫

「――京都の文化そのものがそうじゃない? 大ざっぱに云って」

「或る点そう思う、私も」

全然反対の例にとれる龍安寺の石庭のことなど喋りながら、彼等は真葛ケ原をぬけた。芝生の上はかなりの人出で、毛氈の上に重箱を開いて酒を飲んでいる連中が幾組もあった。大人の遊山の様がいかにも京都らしい印象を彼等に与えた。

円山の方へ向って行く。往来が疎らになった彼方から、女が二人来た。ぼんやり互の顔が見分けられる近さになると、大きな声で一方が呼びかけた。

「ゲンコツァン!」

桃龍とも一人、彼等の余りよく知らない女であった。

「――おふれまいか?」

例の癖の睨むような横目で、桃龍は章子の問いに合点した。

「どこへおいきやすの」

「どこって――その辺ぶらぶらしようと思って」

「ふーん。……ほんならあてもいく。なあ、ヘェ」

つれに振向いて耳打ちし先へやって、彼等は章子達と近所の金魚屋へ入った。入口は植木屋のようで、短いだらだら坂を数歩下ると開いた地面がある。支那鉢や普通の木の箱があって、いろんな種類の金魚が泳いでいた。或る箱の葭簀の下では支那らんちゅうの目の醒めるようなのが魁偉な尾鰭を重々しく動かしていた。