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まぞう
魔像
林 不忘
新版大岡政談
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 131,494 字 · 260 页
人間の慾のなかで、一番大きくかつ一番根強い慾、すなわち生命に対する執着を去って、無形に帰れと教える。つまり、はじめから命の要らない流儀である。生きようとは思わないのだから、怖いものはない。剣を把れば死ぬ気だから、じぶんを衛ろうとしない。攻め一方の、じつに火焔のごとく激しい剣法であった。
こうして、日常すでにいのちを無視している連中だ。この、諸慾中の最大慾だけは、サラリ西の海へ流しても、他の慾は、別である。生命が要らないだけに、酒と女は大いに要る。じっさい、この二つ以外何ものもない、大悟徹底したあぶれ者が揃っていたものだ。
この源助町の道場、無形一刀流、神保造酒のところへ、用心棒を束にして貸してくれと申し込んだ。アイ来たとばかり、ゴロゴロしてるやつが毎晩出かけて来る。無料で一晩中酒が呑めるんだから、こんなうまい話はない。今夜も、いま、遊佐剛七郎、春藤幾久馬、鏡丹波がやって来て、同勢六人、円くなって酒だ。
「いかに横地氏、これだけ集まっておれば、何も心配することはござるまい」
「イヤ、はなはだ意気地がないようで、お恥かしい次第じゃ。何分相手は魔に憑かれておるでナ、用心に越したことはないと神保先生にお願い申し、かくは諸君の御足労をわずらわした訳じゃ。