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まぞう

魔像

林 不忘

新版大岡政談

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 131,494 字 · 260 页

青空文庫

その薄気味のわるい顔を、早く動かすと壊れるおそれがあるとでもいうように、山城守はソウッと客のほうへ捻じ向けた。

退屈し切ったような声だ。

「考えてはおる」と切って、「が、急には行くまい」

じろりと客を見た。

客は、四十二、三の円頂の男である。黒っぽい紬に茶縮緬の十徳のような物を着ている。剃った頭が甲羅を経て茶いろに光って見える。眼のギョロリとした、うすあばたの長い顔だ。不釣合に大きな口をしていて、その口を、しじゅう何か呑みこむ時のように固く結んでいるのだ。村井長庵といって、麹町平河町一丁目の町医である。医術のほうの手腕は大したことはないらしいが、幇間的な、辯巧の達者な男なので、この脇坂山城守をはじめ、こういう大所を病家に持って、無礼御免に出入りしているのだ。

村井長庵は、その固く結んでいる口を動かした。何か言うのかと思うと、手を口のところへ持って行って、口びるを撫でた。言葉を拭き脱ったような具合だ。黙り込んで曖昧なお低頭をした。

山城守が続けていた。

「伊豆屋のほうもある。しかし、琴二郎のことは、お前に任せてあるのだ。よろしきように取り計らうがよい」