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まぞう
魔像
林 不忘
新版大岡政談
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 131,494 字 · 260 页
「うむ。何故じゃ」
「はて、殿様と致しましたことが、お気づきになりませぬかな?」
「それはどういうわけじゃな。あの出奔中の喬之助めが、弟の琴二郎に在所を知らせる位なら、園絵はかれが妻じゃ。好いたの好かれたのという新妻じゃ。まず、弟よりも妻へ報せそうなものではないか」
「さ、そこが、でございます。元旦以来これほどきびしい御詮議の眼をかすめて、今まで影さへ見せませぬ程の強か者の喬之助でござりますから、末の末まで要心をとって、弟にだけはそっと知らせても、御新造の園絵さまには――殿様、女子は口の軽いもの、秘密の守れぬものとなっております。万が一、園絵様の口からふっと洩れはせぬか、洩れはせぬまでも、園絵様の様子で感づかれはせぬかと、そこが、あの細心な喬之助のことでござります。園絵様と琴二郎様は同じく築土八幡の屋敷に一しょにおいでなさるのでござりまするが、何かの手づるで、弟の琴二郎様へだけ内密に知らせて、園絵様には、まずまず、潜伏の個所は耳に入れてないのではないかと、長庵め、愚考いたしまするでござりまする」
賢そうに言っている。山城守は、一応もっともというようにうなずいたのち、