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まぞう

魔像

林 不忘

新版大岡政談

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 131,494 字 · 260 页

青空文庫

「じゃが、琴二郎が知れば、あによめに話しそうなものじゃのう」

「そこがそれ、兄から固く止められておりますことで――」

「そうか。なるほどそうも考えられるのう」

「園絵様も琴二郎様も、お二人とも、もうおしらべがついて、お屋敷へお下げになったのでござりますな」

「うむ。いくら詮議しても甲斐がないから、一応下げたのじゃ。下げておいて、それとなく厳重に眼をつけておる」

「それが一番の御処置でござります。では、わたくしめは琴二郎様のほうを受け持って、専心に眼を光らせますでござりますから、伊豆伍と筆屋のほうは、何分ともにどうぞよろしくおとり扱いを願いまする」

「ああそれは、さっき申した通り、充分に考えてはおくが、そう右から左と急には参らぬ」

何のことか、山城守と町医長庵、しきりに話しこんでいる。

二

棟上げの式も一段落ついて、出入りの者もそろそろ帰りかけた頃である。下谷長者町の筆屋幸兵衛は、壁塗りの勘定のことで、ふと思い出したことがあるので、祝いの日ではあるが、忘れないうちにと思って、その時奥の居間にいたのが、台所へ出て来て、壁を請負った壁辰の親方のすがたを物色した。