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まじゅつ

魔術

芥川 竜之介

雨夜我冒雨去拜访印度魔术师,他答应表演真正的魔法。但你想过吗,学会魔术的代价可能比魔法本身更可怕。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,235 字 · 15 页

青空文庫

すると間もなく戸が開いて、玄関へ顔を出したのは、ミスラ君の世話をしている、背の低い日本人の御婆さんです。

「ミスラ君は御出でですか。」

「いらっしゃいます。先ほどからあなた様を御待ち兼ねでございました。」

御婆さんは愛想よくこう言いながら、すぐその玄関のつきあたりにある、ミスラ君の部屋へ私を案内しました。

「今晩は、雨の降るのによく御出ででした。」

色のまっ黒な、眼の大きい、柔な口髭のあるミスラ君は、テエブルの上にある石油ランプの心を撚りながら、元気よく私に挨拶しました。

「いや、あなたの魔術さえ拝見出来れば、雨くらいは何ともありません。」

私は椅子に腰かけてから、うす暗い石油ランプの光に照された、陰気な部屋の中を見廻しました。

ミスラ君の部屋は質素な西洋間で、まん中にテエブルが一つ、壁側に手ごろな書棚が一つ、それから窓の前に机が一つ――ほかにはただ我々の腰をかける、椅子が並んでいるだけです。しかもその椅子や机が、みんな古ぼけた物ばかりで、縁へ赤く花模様を織り出した、派手なテエブル掛でさえ、今にもずたずたに裂けるかと思うほど、糸目が露になっていました。

私たちは挨拶をすませてから、しばらくは外の竹藪に降る雨の音を聞くともなく聞いていましたが、やがてまたあの召使いの御婆さんが、紅茶の道具を持ってはいって来ると、ミスラ