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たいつりしろうとばなし
鯛釣り素人咄
佐藤 垢石
「釣趣戯書」三省堂、1942(昭和17)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,992 字 · 12 页
瀬戸内海方面では、外から荒波と闘ってきた至味であるとしているのであるが、我々が見た感じでは、内海に育った色鮮やかな鯛の方に魅力を感ずるのである。ところで、簡堂は同じ饌書のうちに、正月以後の鯛はその味幼くして食うべらかず、と言っているが、それは産卵期の春鯛を指したものではあるまいか。
漁師によると、色の黒い頭といい、からだの全体がどことなくいかついのは雄であって必ずしも外洋からきたものではない。四季内海にも数多くいる。また色の冴えた真紅の丸い鯛も外洋からくる。これは雌だ、と言っている。外洋である伊豆網代沖初島まわりの鯛釣り場でも、四、五月頃の春鯛釣りに居付き鯛と称される冴えた立派な鯛と、色の薄黒い鯛とが釣れるのである。だが、色の冴えた鯛の方がおいしいのは勿論である。
真鯛は普通二、三十尋から、百二、三十尋の海底に、連続して点在する岩礁に生えている藻草の間に棲んで餌を求めているのであるが、餌の移動に従って三、四十尋くらいの深さの砂底を、棲み場とすることもある。また夏になると、二、三百匁の中鯛は十尋前後の岸に近い浅場へ出てくることもあり、産卵期になると毎年同じコースを大洋から遠く内海の方へ移動をはじめる。