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なるとひちょう

鳴門秘帖

吉川 英治

03 木曾の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,957 字 · 114 页

青空文庫

送り狼

送り狼

未明のうちに、本郷森川宿を出たお綱と万吉とが、中仙道をはかどって、もうそろそろ碓氷峠の姿や、浅間の噴煙を仰いでいようと思われる頃、――三日おくれて、同じ中仙道の宿駅に、三人づれの浪人を見ることができる。

それが、例の、お十夜と、一角と周馬であった。

こん度の旅は、無論、お綱と万吉のあとを追って、そのうえに、法月弦之丞を刺止めるまでの目的だろうに、わらじ、野袴、編笠という、本格の支度をしているのは天堂一角だけで、周馬は笠なし、お十夜は、笠もわらじも嫌いだといって、素のまま着流しに草履ばきという風態。

まだ軽井沢ぐらいはいいが、それから先の和田峠、猪の字ヶ原の高原、木曾の※所などへかかったら、どうする気だろうと思われるが、小手調べの碓氷峠でも、さして難儀な顔もみせないところは、お十夜も周馬も、旅にはひとかどの見識をもつものとみえる。

「はてな? ……まさか、おれたちの行く道が見当違いをしているのじゃあるまいな」

上田の城下へ入る前に、追分の辻から佐久街道へ折れて、青々とした麦畑や、菜の花に染め分けられた耕地や森や、千曲の清冽などを見渡しながら、フイに、お十夜がこう言いだした。