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なるとひちょう

鳴門秘帖

吉川 英治

03 木曾の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,957 字 · 114 页

青空文庫

笠掛絡を地に捨てて、指の節を一本ずつ、ポキリ、ポキリと、もむようにして、四方を睥睨しているのも、まさに、その気構えをととのえているものと思われる。

しかし。

それもほんの一瞬である。

そよそよと吹く風が、およそ、二、三度鬢づらを撫でたほどな秒間――。

もの蔭や草むらに、また地に匍匐している敵の数も残らず読めた――かるが故に、その陣外にあって、飛び道具を離す二の手はあるまい。四方に散立する大樹の梢にも、それらしい奴のよじ登っている様子もないことが分った。

うむ! ではまず敵は周囲にある二十四、五人だな。――阿波の原士――それに入りまじってあるものは天堂一角、お十夜孫兵衛、旅川周馬。

こう、弦之丞は、心のうちでうなずいた。

諏訪の大湯で、かれらが自分を擁撃した後から、弦之丞はすでに前後の経過を察していた。今、道者船とり止めの高札を見ても、それが故に、さまで驚きもせず落胆もしなかった。また、信濃境から、後なる三人が先へ駈けぬけて行ったことにも気がついていたので、今宵の伏刃も、あらかた、かくあるべく予期していたところ。

さらば来い!

修法のものに不退転という言葉がある。