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なるとひちょう
鳴門秘帖
吉川 英治
03 木曾の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,957 字 · 114 页
つるぎ山へ行き着こうとする目的は、ちょうど彼岸へ達そうとするその信仰と一つだ。ここまで足を踏みだして来ながら、わずか一基の高札文や、三、四十本の錆刀に行き当ったからとて、やわか、一歩でも足を後へ戻してよいものか。
山も阻めてみよ、海も防いでみよ、阿波の関も固めてみよ。
必ず、法月弦之丞は、つるぎ山の間者牢へまで、この足を踏みかけずにはおかぬ。
おお、それを堰かんとすればするほど、不退転の信を強め、自己の一念の度を加えていってみせる!
と――青年弦之丞が全身の熱血は、ここに、火ともならんほど燃えあがって、手はおのずから腰刀の柄へかかり、胆、気、力の充ちみなぎった五体は、徐々に岩を離れてヌーと伸びあがった。
さながら、岩角に雄躯をのばした牡獅子の姿――壮であり美であった。
そして不意に大声の一喝。
「どうしたのだッ! 卑怯な奴めら」
打って響かせた気魄の鋭さ。
これが、白皙痩身の美丈夫、あの弦之丞の声音かと疑われる。
シーッと静まり返っている八方の閃刃。機を逸したか、胆をのまれてしまったか、それに応じる気合いもないうちに、またかれは凛々たる語気を張って、