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なるとひちょう

鳴門秘帖

吉川 英治

03 木曾の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,957 字 · 114 页

青空文庫

「――阿波の原士とは問わでも読めた。汝らの待ち伏せていた法月弦之丞はここにおるぞ。何をしびれをきらしているのか! さッ、かかって来いッ! 斬りつけて来い! さまたげのないもちの木坂はのぞむ所の足場であった。どれほど腕の精魂がつづくものか、夕雲流の八天斬り、九地に死骸の山を積ンでくれる!」

爛とした眼の向くところ、タジタジと退身に動く相手の気配が、敵ながらもどかしそうであった。――と弦之丞は一方の物かげへ向かって、

「――旅川周馬はいないか! お十夜孫兵衛はその中におらぬのか! 天堂一角はいかが致した。いつもこそこそと拙者をつけ狙うておるくせに、なぜ今ここへ真っ向に躍り立って、いさぎよく弦之丞へ名乗りかけぬか。――ウウム! 返辞がないな! では逆礼ながら待ち伏せられたこのほうから初太刀がまいるぞッ――」

「生意気なッ」

と、初めて、怒声を叩き返したのは、剽悍なる原士のひとり、無謀! 血気な太刀に風をくらわせて、閃光とともに弦之丞の身辺へ躍りかかって行った。

待つや久し――

柄に満を持していた弦之丞の片肘、ピクリッと脈を打ったかのごとく動いて、真っ向に躍ってきた影をすくうかとみれば、バッ――と鞘を脱した離弦の太刀!