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なるとひちょう

鳴門秘帖

吉川 英治

03 木曾の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,957 字 · 114 页

青空文庫

陣屋門みたいなそこの出入り口へ、今、足を引きずって来たのはお米と仲間の宅助で、もうこの辺へ来て四方を仰ぐと、綱付山、赤帽子岳、丸笹の峰などが、白雲の上に巨影をみせているので、まったく、山奥へ来たという感じが深い。

「もうここまで来れば、日が暮れようと、雨が降ろうと、安心なものでございます。どれ、とにかく、取次を頼んでみましょう」

と、宅助がつかつか門際へ寄ってゆくと、前後してきた甲比丹の三次が、もうそこにいた組子の者に、腰をかがめて何かしゃべっている。すると、

「さようか、では、しばらくそこに待っておれ」

と一人の小者が奥の目付屋敷へ入って行った様子。三次は、なれなれしく門小屋の土間炉へしゃがみこんで、煙草入れをとりだしていた。

「恐れ入りますが、ちょっと、お願い申します」

こんどは宅助が揉み手をして行って、

「御城下からお出張になっている、森啓之助様へお目にかかりたい者でござります。どうぞお取次を願います」

「その森啓之助様なら、只今、同役が知らせに行ったよ。しばらく待っておいでなさい」

「いえ」宅助は、わざと三次へ目もくれないで、

「そこにいる者とは違います。