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なるとひちょう
鳴門秘帖
吉川 英治
03 木曾の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,957 字 · 114 页
「エエ、和田峠から、私たちを、つけ廻してくる侍がありましてね」
「へえ、あなた方を? ……」
「お宅へ着いて、ホッとひと安心いたしましたが、まだこのように胸が波を打っておりまする。誰か、お冷水を一杯下さいませんか」
「怖ろしい侍たちでございました。しかもそれが三人づれで、和田峠の下りから、オーイと、私たちを呼びはじめたではございませんか」
四国屋とよばれた商家の内儀は、宿屋の老主人にこう話して、青い眉毛の痕をひそめた。
「ほ、三人づれの侍が?」
「ふりかえってみますと、上から早足に追ってまいります。それは、かなり間がありましたゆえ、わたしどもは怖い一心で、麓へつくとすぐに駕へ乗ってまいりましたが、気味の悪い侍たちは、それから先まで執念ぶかく駈けてきたそうでございます」
「ま、なんという図々しい奴」
「藍草の掛けを取ってまいりましたので、その金に目をつけられたかと存じます」
「そうかも知れませぬ。ですが、もうご安心なさいまし、ここへ来たとて、決して泊めは致しませぬ」
「もしまた、姿でも見つけると、これから先、上方までの道中が、ほんとに思いやられます」
「そういう訳なら、早く、奥の部屋へ隠れておしまいなさいませ。