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なるとひちょう
鳴門秘帖
吉川 英治
03 木曾の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,957 字 · 114 页
「じゃ、こんど出た時に送って貰おう」
「おうけあいはできませんが、お所だけ伺っておいてみましょう」
「ム、わしは、大阪の九条村、平賀源内というものだよ」
「あ、平賀先生で、お名まえは伺っておりました。どちらへお越しでございますか」
「御岳へ薬草採りにまいったが、どうも、ほしいものがあまりなくてな……。だがまた、意外な儲け物もいたしたよ。これ」と合財袋の口をのぞかせて、採集してきた草根木皮を一掴みつかんで見せていたが、その時、ふと店先を過ぎてゆく旅人の姿に目を追って、
「ではまた、なんぞ要る品があった時には、手紙を出して注文するから、よろしく頼むよ」
あわてて百獣店を出た源内は、七、八間ほど走りだすと、先へゆく二人づれの後ろへ、
「おい、万吉。そこへゆくのは、天満の万吉ではないか」と呼んで煽ぐように手をふった。
声に気がついて、足を止めた先の者は、中仙道の順路を辿ってこの木曾街道のなかばにある目明しの万吉とお綱であった。
通りすがった姿を見かけて、百獣店から追ってきた源内は、とんだよい道づれを見つけた気で、緩々たる歩調とのどかなあるきばなしに、木曾風俗の漫評や、御岳山の裏谷で採った薬草の効能や、そうかと思うと、近頃、大阪に見えない鴻山はどうしたろうとか、俵一八郎の伝書鳩はどうだとか、木曾のお六櫛に朱漆をかけてミネに銀