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とびとかきととり

鳶と柿と鶏

豊島 与志雄

「知性」1939(昭和14)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,493 字 · 21 页

青空文庫

腹が立つよりも、そんなことを云う人……そんな風に考える人を、下等だとは思いませんか。」

「下等というより……物が分らないんだね。」

「そうです、物が分らない、人間というものが分らないんです。」

吉村はそれに同感された。殊に乞食の話は胸にこたえた。

「それにしても、すぐ東京に帰らなくったって……近いうちに僕も帰るんだし、それまで待たないか。」

「東京でまた伺います。ただ、僕は、下等なあの人が好きで、半月も損をしたのが、残念です。腹を立ててやしませんよ。けれど、なにかはっきり、意思表示をしたいです。」

「そのため、すぐここを引上げるのかね。」

「そうでもありません。意思表示をして引上げたいですが、方法を考えてるところです。」

「それよりか、逆に、鳶でも生捕って、進呈して引上げるんだね。」

「ええ、鳶……鳶はいいですね。」

ぽつりと云われたその言葉が、なんだか淋しい響きだった。李はなにか空想するような眼付で、しばらく黙りこんだ。

やがて、どうしても明朝早く東京に帰るという李を送り出して、吉村は室に寝ころびながら、いろいろ彼のことを考え、また君枝のことなどを考えてるうちに、ふと、彼等二人の間の淡い……恐らくは無意識的な情愛とでも云えるものにぶっつかった。