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とびとかきととり

鳶と柿と鶏

豊島 与志雄

「知性」1939(昭和14)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,493 字 · 21 页

青空文庫

お取りなさい、と君枝は答えた。裏の木戸から人がはいって来る様子だった。それからだいぶ暫くして、もうそのことを忘れた頃、一人の青年が走って来た。手に柿を持っていた。あまり美しい柿だから、ちょっとさわってみると、もう熟して、おいしくなっている。だから、僕たち、一つずつ貰いました。どうぞ下さい。とそう云うのである。眉から眼から鼻立へかけてきりっとした白皙の顔で、それがどこかのびやかなところがあり、それに言葉がぶっきら棒なのがおかしく、(勿論これだけは李の前では彼女は話さなかったが、)何よりも、柿を既に貰ったと云いながら下さいと云うのがおかしく、ええどうぞと彼女はたのしく答えた。すると青年は云った。僕たちは四人だが、一つずつ貰うつもりで、五つもいでしまった。一つ余るから、これは返します。うまい柿だから、食べてみて下さい。そしてこちらから持って来てでもやったかのように、縁側に柿を一つ置いて、走って行ってしまった。――それがきっかけで、時々、村の子供を二三人つれて、三つ四つずつ、柿を取りに来るようになった。懇意にもなったというのである。

「なるほど、李君の面目躍如たりというところだね。