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あへんをのむびしょうねん

鴉片を喫む美少年

国枝 史郎

「オール読物」1931(昭和6)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,061 字 · 21 页

青空文庫

そう僕は訊いて見た。

「水師提督の方のエリオットです」

水師提督エリオットは、この上海の英国領事の、もう一人のエリオットの親戚なのだが、鴉片戦争が始まるや否や、印度及び喜望峰の兵、一万五千人を引率し、軍艦二十六隻をひきい、大砲百四十門を携え、定海湾、舟山島、乍浦、寧波等を占領し、更に司令官ゴフと計り、海陸共同して進撃し、呉淞を取り、上海を奪い、その上海を根拠とし、揚子江を堂々溯り、鎮江を略せんとしている人間なのさ。

グレーというのは英軍切っての、謂うところの花形で、毀誉褒貶いろいろあるが、人物であることは疑いなく、この男の参謀戦略によって、英軍は連戦連勝し、清国は連戦連敗しているのさ。

僕達二人は鴉片を喫わず、永いことそんなような話をした。

その翌夜も翌々夜も、僕達二人は同じ鴉片窟で逢った。

宋思芳はだんだん鴉片を煉るに慣れ、追々鴉片の醍醐の味に、沈湎するように思われた。

僕はしばしば宋思芳に向かって、どういう素性の人間なのか、どこにどんな家に住んでいるのか、家族にどういう人達があるかと、そんなことを訊いて見たが、彼はいつもうまく逃げて、話をしようとはしなかった。