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かもめ
鴎
「知性」1940(昭和15)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,451 字 · 23 页
に、がまんならぬ憎悪を感じた。君たちの、いい気な文学が、無垢な兵隊さんたちの、「ものを見る眼」を破壊させた。これは、内地の文学者たちだけに言える言葉であって、戦地の兵隊さんには、何も言えない。くたくたに疲れて、小閑を得たとき、蝋燭の灯の下で懸命に書いたのだろう。それを思えば、芸術がどうのこうのと自分の美学を展開するどころでは無い。原稿に添えて在るお手紙には、明日知れぬいのちゆえ、どうか、よろしくたのみます、と書いているのだ。私は、その小説を、失礼だが、(私には、その資格がないのだが)少し細工する。そうして妻に言いつけて、そのくしゃくしゃの洋箋の文字を、四百字詰の原稿用紙に書き写させる。三十何枚、というのが、一ばん長かった。私は、それを、ほうぼうの職業雑誌に、たのむのである。「割に素直に書かれて在ると思いますから、いい作品だと思いますから、どうかよろしくお願いいたします。私みたいな、不徳の者が、兵隊さんの原稿を持ち込みするということに、唐突の思いをなされるかも知れませんが、けれども人間の真情はまた、おのずから別のもので、私だって、」と書きかけて、つい、つまずいてしまうのだ。