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こうのすにょうぼう

鴻ノ巣女房

矢田 津世子

「文芸」1941(昭和16)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,884 字 · 24 页

青空文庫

名刺には子爵男爵と肩書のついたのもあった。それほど儲けにもならず、寝食いの日が多かった。

工場の友だちが遊びにくるたびに、ぎんは肩身の狭い思いをする。はじめっからあんたの貯金が目あてだったんだからと、その友だちは親身になって忠告した。今のうちに別れないと飛んだことになるとも嚇かした。しかし、ぎんは別れる気がなかった。男は仕入をすると云っては、あらかた金を持ち出した。家をあけることが多くなった。たまにくつろげば酔って「おい、シャグマ」と喚き立て出て行けがしの愛想づかしだった。

どのような男の仕打も、ぎんには我慢が出来た。子供のために堪えられたのである。子供はぎんになついて、可愛かった。まわらぬ口で母チャン母チャンと呼びなれていた。ねむくなると、涎れの顔をぎんの胸にこすりつけてきた。そしてから乳を吸って機嫌よく寝入った。ぎんはこの子が可愛くってたまらなかった。朝から晩まで、子供のことでいっぱいだった。人に会いさえすれば子供自慢だった。

「うちの子は、まあ、なんて早智慧なんでしょう。けさもね、鳩ポッポを教えたらもうすっかりおぼえこんじまって、さあ、俊ちゃん、小母さんにポッポッポを唱って上げれせ。