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こうのすにょうぼう

鴻ノ巣女房

矢田 津世子

「文芸」1941(昭和16)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,884 字 · 24 页

青空文庫

写真の中の友だちもぎんも眉毛のかくれるほどの大きな束髪に結って、どういうつもりか揃って右手を袂の中に隠していた。

部屋の隅には古行李やボール箱が積み重ねてあった。ひびの入った電燈の花笠や、摘み細工のぼろぼろになった柱懸や、インキ瓶のようなものまで、丁寧に納まってあった。主人から、もう捨ててもいいよと許しの出た物は、なんでもみんな頂戴しておいたのである。

古行李には、ぎんが持物の中でも一番自慢にしているもの、奥様のお下りのラッコの毛で縁どったショールが納まってあった。これは舶来物の飛切品だと奥様は今も惜んでいる。しかし、紺屋の婆様の鑑定によると、ラッコとは真っ赤な嘘で、兎の毛をうまく染めたものだという。虫のせいか、あちこちボッコリと毟り取ったように毛が抜けて、見るかげもなかった。

毎度、虫干しの季節になると、ぎんはこの三畳間に細引を張って、持物に風を通すことを忘れなかった。そんなとき、紺屋の誰かが格子窓から覗くと、ぎんは一つ一つに勿体をつけて自慢した。店の娘たちが汗になってミシンにしがみついているところへ、出しぬけにラッコのショールで現われて、みんなの度胆を抜いたりした。