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がちょう

鵞鳥

幸田 露伴

「日本評論」1929(昭和14)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,335 字 · 23 页

青空文庫

激しているのでも無く、怖れているのでも無いらしい。が、何かと談話をしてその糸口を引出そうとしても、夫はうるさがるばかりであった。サア、まことの糟糠の妻たる夫思いの細君はついに堪えかねて、真正面から、

「あなたは今日はどうかなさったの。」

と逼って訊いた。

「どうもしない。」

「だって。……わたしの事?」

「ナーニ。」

「それならお勤先の事?」

「ウウ、マアそうサ。」

「マアそうサなんて、変な仰り様ネ。どういうこと?」

「…………」

「辞職?」

と聞いたのは、吾が夫と中村という人とは他の教官達とは全く出が異っていて、肌合の職人風のところが引装わしてもどこかで出る、それは学校なんぞというものとは映りの悪いことである。それを仲の好い二人が笑って話合っていた折々のあるのを知っていたからである。

「ナーニ。」

「免職? 御さとし免職ってことが有るってネ。もしか免職なんていうんなら、わたしゃ聴きやしない。あなたなんか、ヤイヤイ云われて貰われたレッキとした堅気のお嬢さんみたようなもので、それを免職と云えば無理離縁のようなものですからネ。」

「誰も免職とも何とも云ってはいないよ。お先ッ走り! うるさいネ。