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わし
鷲
岡本 綺堂
岡本綺堂『鷲』。同一底本的分册已合并为一书。收入:麻畑の一夜、鰻に呪われた男、怪獣、兜、経帷子の秘密、くろん坊、深見夫人の死、雪女、鷲、マレー俳優の死。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,476 字 · 290 页
三
旦那さまが頼政で、この久助が猪早太という役廻りだ。鷲撃ちの時にゃあ、おれもこんな犬おどしの木刀を差しちゃあ行かねえ。本身の脇指をぶっ込んで出かけるんだから、そう思ってくれ。あははははは。」
彼はそり返って又笑った。
三
十月朔日の明け六つに、和田弥太郎は身支度して白山前町の屋敷を出た。息子の又次郎と下男の久助もそのあとについて行った。又次郎はことし二十歳であるが、父の弥太郎が立派にお役を勤めているので、彼は今もまだ無役の部屋住みである。しかも又次郎にかぎらず、たとい部屋住みでも十五歳以上の者は見習いとして、その父や兄に随行することを黙許されていた。
見習いというのであるから、役向きの人々の働きを見物しているだけで、自分が鉄砲を撃ち放すことを許されないのである。殊にその時代の鉄砲は頗る高価で、一挺十五両乃至二十両というのであるから、いかに鉄砲組でも当主は格別、部屋住みの者などは本鉄砲を持っていないのが例であった。又次郎は幸いにその鉄砲を持っていたので、菰づつみにして携えて行くことにした。
きょうは朔日でもあり、殊に今年は鷲撃ちの年番にあたって出張るのである。