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わし
鷲
岡本 綺堂
岡本綺堂『鷲』。同一底本的分册已合并为一书。收入:麻畑の一夜、鰻に呪われた男、怪獣、兜、経帷子の秘密、くろん坊、深見夫人の死、雪女、鷲、マレー俳優の死。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,476 字 · 290 页
高谷君は彼のあとについて堤から十町ほども行くと、広い麻畑が眼の前にひろがって、芭蕉に似た大きい葉が西南の風になびいていた。丸山はその一年の産額や品質などをいちいち詳しく説明してくれた。
「まあ、我れわれの小屋へいらっしゃい。お茶でもいれますから。」
それからまた二町ほども行くと、そこに大きい家があった。屋根はトタンでふいて、三方は日本風の板羽目になっていたが、そのひどく破損しているのが高谷君の眼についた。案内されて内へはいると、中は一面の土間になっていて、部屋の隅には寝台と毛布がみえた。棚の上には酒の壜や缶詰のたぐいも乗せてあった。ふたりはまん中に据えてある丸いテーブルを囲んで、粗末な椅子に腰をおろした。
「おい、勇造、お客様だ。早く来い。」
丸山に呼ばれて、ひとりの青年が外からはいって来た。年のころは十八、九で、これもこういう南洋生活をしているにふさわしい、見るから頑丈らしい男であった。かれは茶っぽい縮のシャツを着て、麻のズボンをはいていた。
天草の生れで、弥坂勇造という男であると、丸山はこれを高谷君に紹介した。勇造は丸山のボーイ代りに働いているらしく、かいがいしく立廻って、チョコレートやビスケットなどを運んで来た。