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おうむぐらかえくびでんせつ
鸚鵡蔵代首伝説
国枝 史郎
「冨士 特別増大号」1937(昭和12)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,083 字 · 26 页
「お仕事は、まだお済みではございませんかな」
「チェ」とお篠は舌打ちをした。
「まだ済まぬよ。……向こうへ行っておいで。……お前などの来るところではないよ」
「へい。ちょっとお話を……」
「また! いやらしい話かえ! ……くどい」
「いいえ……よく聞いていただきまして……」
「お黙り!」
飯食い地蔵
翌日菊弥は庭へ出て陽を浴びていた。
寛文四年五月中旬のさわやかな日光は、この山国の旧家の庭いっぱいにあたっていた。広い縁側を持った、宏壮な主屋を背後にし、実ばかりとなった藤棚を右手にし、青い庭石に腰をかけ、絶えず四辺から聞こえてくる、老鶯や杜鵑の声に耳を藉し、幸福を感じながら彼は呆然していた。納屋の方からは、大勢の作男たちの濁声が聞こえ、厩舎の方からは、幾頭かの馬の嘶く声が聞こえた。時々、下婢や下男が彼の前を通ったが、彼の姿を眼に入れると、いずれも慇懃に会釈をした。彼を、この家の主婦の弟と知って、鄭重に扱うのであった。
(いいなあ)と菊弥は思った。
(これからわしはずっとここで生長なるのだ。そうしてここの家督を継ぐのだ。これ迄は、父親のない、貧しい浪人者の小倅として、どこへ行っても、肩身が狭かったが、もうこれからはそんなことはないのだ)