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おうむぐらかえくびでんせつ
鸚鵡蔵代首伝説
国枝 史郎
「冨士 特別増大号」1937(昭和12)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,083 字 · 26 页
その菊弥も、官吏や世間の目を眩ますことは出来たが、土蔵破の綱五郎の目は欺むけず……
だんだん抵抗力が弱って来た。
(何人か……来て! 助けてエーッ)
そういう声も口からは出ない。
と、この時蔵の中が、仄かな光に照らされて来た。光は、次第に強くなって来た。蔵の奥に、二階へ通っている階段があり、その階段から光は下りて来た。段の一つ一つが、上の方から明るくなって来た。と、白布で包んだ人の足が、段の一つにあらわれた。つづいて、もう一方の足が、その次の段を踏んだ。これも白布につつまれている。
黒羽二重の着物を着、手も足も白布で包み、口にお篠の生首を銜え、片手に手燭を持った男が、燠のように赤い眼、ふくれ上った唇、額に瘤を持ち、頤に腐爛を持った獅子顔を正面に向け、階段を下り切ったのは、それから間もなくのことであった。髪を銜えられて、男の胸の辺りに揺れているお篠の首は、手燭の光を受けて、閉じた両眼の縁が、涙で潤っているように光っていた。その顔の左右へは、男の、髻の解けた長髪が振りかかり、女の首を抱いているように見えた。
「わッ」という怯えた声が響いた時には、綱五郎は躍り上っていた。