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マージャンさつじんじけん
麻雀殺人事件
海野 十三
「新青年」博文館、1931(昭和6)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,337 字 · 33 页
1
それは、目下売出しの青年探偵、帆村荘六にとって、諦めようとしても、どうにも諦められない彼一生の大醜態だった。
帆村探偵ともあろうものが、ヒョイと立って手を伸ばせば届くような間近かに、何時間も坐っていた殺人犯人をノメノメと逮捕し損ったのだった。いや、それどころではない、帆村探偵は、直ぐ鼻の先で演じられていた殺人事件に、始めから終いまで一向気がつかなかったのだというのだから口惜しがるのも全く無理ではなかった。
「勝負ごとに凝るのは、これだから良くないて……」
彼はいまだにそれを繰返しては、チェッと舌を打っているところを見ると、余程忘れられないものらしい。彼が殺人事件とは気づかず、ぼんやり眺めていたという其の場の次第は、およそ次にのべるようなものだった。
* * *
それは蒸し暑い真夏の夜のことだった。
大東京のホルモンを皆よせあつめて来たかのような精力的な新開地、わが新宿街は、さながら油鍋のなかで煮られているような暑さだった。その暑さのなかを、新宿の向うに続いたA町B町C町などの郊外住宅地に住んでいる若い人達が、押しあったりぶつかり合ったりしながら、ペーブメントの上を歩いていた。