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たそがれのこくはく

黄昏の告白

浜尾 四郎

「新青年」博文館、1929(昭和4)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,453 字 · 41 页

青空文庫

沈み行く夕陽の最後の光が、窓硝子を通して室内を覗き込んでいる。部屋の中には重苦しい静寂が、不気味な薬の香りと妙な調和をなして、悩ましき夜の近づくのを待っている。

陽春のある黄昏である。しかし、万物甦生に乱舞するこの世の春も、ただこの部屋をだけは訪れるのを忘れたかのように見える。

寝台の上には、三十を越してまだいくらにもならないと思われる男が、死んだように横たわっている。分けるには長すぎる髪の毛が、手入れをせぬと見えて、蓬々と乱れて顔にかかっているのが、死人のような顔の色を更に痛ましく見せている。細い高い鼻と格好のよい口元は、決して醜い感じを与えないのみか、むしろ美しくあるべきなのだが、生気のまったく見えぬその容貌には、なんとなく不気味な感じさえ現われているのである。

傍には、やはり三十を越えたばかりと見える洋装の男が、石像のごとく佇立して、憐れむように寝台の男を見つめている。彼もまた極めて立派な容貌の所有者である。しかし、この厳粛な、否むしろ不気味な静寂は、その容貌に一種の凄さを与えている。

横たわれるは患者である。傍に立てるは医師である。この病院の副院長である。