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たそがれのこくはく
黄昏の告白
浜尾 四郎
「新青年」博文館、1929(昭和4)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,453 字 · 41 页
しかしその幸福は六ヶ月程経った時、永久に失われてしまったのだ。僕は蓉子を完全に得ているかどうかということを疑いはじめた。そう思った時、すでに僕は幸福というものはなくなってしまったんだ。蓉子も初めは僕を愛した。しかし、はたして蓉子は人間としての僕を愛していたのだろうか。
米倉の盛名が輝くにつれ、蓉子の瞳も輝きはじめた。僕は妻を疑いはじめた。蓉子がいつまでも僕を愛しきって行かれるかを。
結婚! 人は結婚を愛の墓場だとか恋の墳墓だとかいう。そう思っていられる人々は何と幸福だろう。結婚は平和な墓場ではない。静かな休息所ではない。結婚は恐ろしき呪いだ。
これは僕の生れつきの生活から来ているのか、あるいは僕が、米倉という恋の競争者をもっていて、それに一度打勝って妻を得たという、そういう特殊な場合だったからかもしれない。が、いずれにせよ、僕は結婚したことによって、ますます心の不安を感じなければならなかったのだ。
結婚すれば蓉子を完全に得られる――彼女の身体もそうして心も、全部を! こう考えていた僕はなんという馬鹿者だったろう。僕ははじめこそ、それを二つながら得たと思った。