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くろてぐみ

黒手組

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1925(大正14)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,978 字 · 36 页

青空文庫

「それからどうしました」

「で、わしはもう帰ろうというと、牧田が賊の足跡を検べて見ようというのです。つまりあとになって警察に教えてやれば非常な手懸りになるだろうという意見でね。そうだったね牧田」

「はあ」

「足跡が見つかりましたか」

「それがね」伯父は変な顔付をして云うのです。「わしはどうも不思議で仕様がないのですて。賊の足跡というものがないのです。これは決してわし達の見誤りではないので、昨日も刑事が検べに行ったそうですが、淋しい場所で其後人も通らなかったと見え、わし達両人の足跡はちゃんと残っているのに、その外の足跡は一つもないということでした」

「ほう、それは非常に面白いですね。もう少し詳しく御話願えませんでしょうか」

「地面の現れているのは、あの一本松の真下の所丈けで、そのまわりには落葉が溜っていたり、草が生えていたりして、足跡はつかない訳ですが、その地面の現れている部分には、わしの下駄と牧田の靴の跡しか残っていないのです。ところが、わしの立っていた所へ来て金包を受取る為には、どうしたって賊はその足跡の残る様な部分へ立入っていなければならないのに、それがない。