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くろてぐみ
黒手組
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1925(大正14)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,978 字 · 36 页
こうして明智の説明を聞けば聞く程、却って真相が分らなくなって来るのです。無数の疑問が、頭の中でゴッチャになって、こんぐらがって、何から訊ねていいのか訳が分らない位です。
「じゃ、先刻君は、『黒手組』と約束したなんて、なぜあんな出鱈目を云ったのだい。第一分らないのは、若し牧田の仕業とすれば、彼を黙って抛って置くのも変じゃないか。それから、牧田はあんな男で、富美子を誘拐したり、それを、数日の間も隠して置いたりする力がありそうにも思われぬし。現に富美子が家を出た日には、彼は終日伯父の邸にいて一歩も外へ出なかったというではないか。一体牧田見たいな男に、こんな大仕事が出来るものだろうか。それから……」
「疑問百出の態だね。だがね、若し君がこの葉書の暗号文を解いていたら、少くともこれが暗号文だということを観破していたら、そんなに不思議がらないで済んだろうよ」
明智はこう云って、いつかの日伯父の所から借りて来た例の「やよい」という署名の葉書を取出しました。(読者諸君、甚だ御面倒ですが、どうかもう一度冒頭のあの文面を読み返して下さい)
「若しもこの暗号文がなかったら、僕はとても牧田を疑う気になれなかったに相違ない。