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くろてぐみ

黒手組

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1925(大正14)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,978 字 · 36 页

青空文庫

彼はそれを押えつけて置いて続けました。「僕は現場を検べると、その足で伯父さんの邸の門前へ行って牧田の出て来るのを待伏せしていた。そして、彼が使にでも行くらしい風で出て来たのを、うまくごまかしてこのカフェーへ連れ込んだ。丁度今僕等が坐っているこのテーブルだったよ。僕は彼が正直者だことは、始めから君と同様に認めていたので、今度の事件の裏には何か深い事情が潜んでいるに相違ないと睨んでいた。でね、絶対に他言しないし、品によっては相談相手になってやるからと安心させて、とうとう白状させて了ったのだ。

君は多分服部時雄という男を知っているだろう。キリスト教信者だという理由で、富美子さんに対する結婚の申込を拒絶されたばかりでなく、伯父さんの所への御出入りまで止められて了った、あの気の毒な服部君をね。親というものは馬鹿なもので、流石の伯父さんも、富美子さんと服部君とがとうから恋中だったことに気づかなかったのだよ。又富美子さんも富美子さんだ、何も家出までしないでも、可愛い娘のことだ。如何に宗教上の偏見があったって、出来て了ったものを今更ら無理に引離す伯父さんでもあるまいに、そこは娘心の浅薄というようだ。