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くろてぐみ
黒手組
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1925(大正14)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,978 字 · 36 页
あの愚しい男に、こんな巧妙なトリックを考えださせたのも、全く恋なればこそだよ」
私は聞き終って、ほっと溜息を吐いたことです。何となく考えさせられる事件ではありませんか、明智も喋り疲れたのか、ぐったりとしています。二人は長い間黙って顔を見合せていました。
「すっかりコーヒが冷えて了った。じゃ、もう帰ろうか」
やがて明智は立上りました。そして、私達は各々の帰途についたのですが、分れる前に明智は何か想出した風で、先刻伯父から貰った二千円の金包を私の方へ差出しながら云うのです。
「これをね、序の時に牧田君にやって呉れ給え。婚資にと云ってね。君、あれは可哀そうな男だよ」
私は快く承諾しました。
「人生は面白いね。この俺が今日は二組の恋人の月下氷人を勤めた訳だからね」
明智はそういって、心から愉快そうに笑うのでした。