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こくばんはどこからきたのか

黒板は何処から来たのか

小倉 金之助

「別冊文芸春秋」1947(昭和22)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,742 字 · 10 页

青空文庫

――を教授しようとした時、その学修上、先ず予備知識として必要な数学から始めなければならなかった。その中に画法幾何学があったのである。

思えばこの画法幾何学という学問は、その創始者(エコール・ポリテクニク)のモンジュ(Gaspard Monge)によって公表されてから、ようやく二十年を超えたに過ぎない。そんな新しい学問があることを知っていた科学者は、アメリカに何人もいなかったし、勿論それを教わった人もなければ、英語で書かれた本もなかった時代である。教科書もなければ、またこの幾何学は(学問の性質上)口頭だけで教えることも出来なかった。そこでクローゼーは大工と絵具屋に頼み込んで、黒板と白墨を作らせたのである。「私たちが知っている限りでは、黒板の使用はクローゼーに負うものである。彼はそれをフランスのエコール・ポリテクニクで見ていたのであった」とは、当時のウェスト・ポイント出身者の回想である。

考えて見ると、私がこれまで挙げて来たマーレー、スコット、ブロシウスのような人々は、皆何等かの意味で、数学の関係者であった。しかしクローゼーこそは、学問の性質上、最も本格的な意味で黒板を使用したというべきであろう。